(番外編)東大阪市親子釣り教室レポート⑤

波止釣り 実釣

6月24日、今回は釣り教室の最後を飾る合宿です。

午前8時30分、参加者は東大阪市民会館前へと集合。皆の願いが通じたのか、今のところ雨は降っていません。総勢13組、延べ30名を乗せたバスは一路、奈良県の下北山村へ向け出発です。

近畿道~西名阪道を経由すると、やがて山道へさしかかり、窓の外には野里の風景も見えるようになってきました。1時間ほど走ると、アユ釣りで有名な「吉野」を通過。この日はアユ釣りの大会も催されており、たくさんの長竿をかついだ鮎師たちが川の中に入っていました。

現地へ到着するまでの時間を利用し、車中では現場実習の綿密なる打ち合わせ。事前の打ち合わせどおり、今回の行事をより盛り上げるとの趣旨で、急きょ「親子ふれあい釣り大会」を開催することに。審査方法は一尾長寸。魚種にはとらわれず、とにかく一番ビッグな獲物を釣った方が優勝となるわけです。賞品はインストラクターの有志一同で買っておいた魚釣りセット(竿・リールセット)をはじめ、㈱ヤマシタから提供いただいた仕掛けなど。子供たちもきっと喜んでくれることでしょう。

山深い上北山村までくると、とても険しい道のりでバスも激しく揺れるようになってきました。車窓にはみごとな渓谷が続き、まるで空を飛んでいるような間隔です。道幅も大変狭く、もはや対向車とのすれ違いは不可能。ひとつまちがえるとあっという間に谷底へ転落です。しかし、どんな急カーブでも鮮やかなハンドルさばき。さすがプロの運転手は一味ちがいますね。

午後12時を少し過ぎ、バスはようやく下北山村へと到着。

この下北山村は奈良県の最南端に位置し、手付かずの自然もたくさん残っていることから「きなりの里」とも呼ばれています。この村の中にある「東大阪市立下北山自然ふるさと村」には、温泉をはじめテニスコートやキャンプ場、さらには川遊びができる場所まであるとのこと。なお、ロッジをはじめとする各施設については、東大阪市民であれば特別料金で利用できます。(もちろん、一般の方でも利用は可能)詳しい情報はこちらをご覧下さい。

http://www.d1.dion.ne.jp/~k_nozaki/

また、この村の中には全国のバサー(ブラックバス釣りを楽しむ人たち)からも注目を浴びている「池原ダム」があります。ダム近くの喫茶店では、「ブラックバス定食・1000円」というメニューもあるとのこと。興味のある方は話のネタがてら一度ご試食されてはいかがでしょうか。

本日の宿泊先は下北山村スポーツ公園内にあるロッジ。到着後はすぐにロッジの食堂へと集合しました。昼食にはカレーライスが登場。車中ではほとんど何も口にしなかったせいかお腹はペコペコ。とはいえ、食べても食べても減らないそのボリュームには圧巻。やっとの思いで食べ終わったとき、「もう1杯、カレーどうでっか」との声がかかりましたが、僕はたまらず拝むようにお断りしました。「もう食べれましぇーん」

昼食後、参加者は一旦部屋へと入り釣り支度。我々も部屋で釣り大会の審査カードを作ることになりました。審査カードを作っている途中、僕はふと、不思議な物があることに気付いてしまいました。部屋の天井の隅っこになにやらサイレンのようなものが取り付けられているのです。「あれは一体何やろ」。すぐさま、先ほどバスの中から池原ダムの大きな壁が見え、この施設はダムの壁の真下に位置していたことを思い出しました。このことから、恐らくダムの水位が上がった時などに警告を促すためのものでしょう。今は梅雨の真っ只中、雨量の多いこの地域では水位もかなり上がっているのでは。不安気な表情の僕は、「サイレン鳴ったら怖いですね」と、ひとりの講師に声をかけてみました。するとその人はあっけらかんとした顔で「あれだけの貯水量をかかえたダムやで、決壊したら、あっちゅー間にみんな流されてもうて終わりですわ。苦しんでる暇なんかおまへんで、あっはっはー!」何ともまぁ、楽観的な考え。幸せな方です。

午後1時30分、参加者全員がロッジのロビーへと集合。釣り大会の趣旨を説明の後、施設内にある安全なため池へと引率しました。今日もウキ釣りでブルーギルやマブナなどを狙うことにします。ちなみに講師陣が下見にきた際には、ミミズをエサにブルーギルがバカ釣れでした。

前回の深北緑地では大敗をきっした我々釣り教室メンバー。今回はその雪辱戦でもあるため、何としてでも釣らせてみせます。

釣り開始そうそう、ひとりの女の子が魚を片手に審査本部へとやってまいりました。本日の第1号は15センチのブルーギル。エサはやはりミミズがいいようです。ミミズで釣れたという情報が流れると、あちらこちらでも頻繁に竿が曲がるようになってきました。

30分ほど経過した頃、ビッグなブラックバスを抱えたお母さんがやってきました。検寸結果は31.5センチ。現在のところトップです。ニンマリとした表情のお母さんは僕に向かって一言「これ、何という魚ですか?」

その後も審査本部へは続々と魚が持ち込まれてきます。講師陣は検寸と記録に大忙し。また、釣らせるという使命感に燃えたひとりの講師は「1匹も釣ってない人は、僕についてきて」と必死になってくれていました。

午後3時30分、3箱も仕入れてきたミミズが底をつきました。すぐに近くのガソリンスタンドへと車を走らせます。エサを追加した後も、親子揃って釣れるわ釣れる。30センチオーバーのマブナやニシキゴイまでも登場。賑やかな釣り大会となってきました。5名の講師は検寸と記録でもうクタクタ、喉もカラカラといった状態です。僕は思わず心の中で「頼むから、もう釣らんといてー」と叫んでしまうほどでした。

午後5時、タイムアップにより釣り大会も終了。ほとんどの検寸記録を終えかけようとしていた時、1組の親子が大きなバケツを重そうにかかえてやってきました。バケツを覗くと、一面ブルーギルだらけ。恐らく30匹はいるでしょう。釣り大会という名目上、これを全部計測しなくてはなりません「オー、マイゴット!」

釣り大会が終了すると、ほとんどの参加者は温泉「きなりの湯」へ。講師陣と市のスタッフは釣り場の後片付けを終えると、今度は部屋へ戻って成績の集計作業です。部屋へ入ると同時に、講師全員は畳の上で大の字に。「ああー、しんどぉー」

夕食の時間に間に合うようにと、講師全員の総がかりで順位と商品の割り付け作業を開始。今回も息つく暇はありません。

夕食の時刻となった午後6時、参加者はバーベキューガーデンへと集合。「ジュージュー」とあちこちから肉を焼くジューシーな音が聞こえ、食欲をかきたてます。僕も早速、大きな肉へとかぶりつきました。「うーん、うまい!」

宴たけなわの中、いよいよ釣り大会の結果発表がやってきました。下位の成績から順次読み上げていくことに。

順位の発表ごどに、どっと沸きあがる拍手と歓声。上位が近づくにつれ、次第にそのボルテージも高まっていきます。そしていよいよ、優勝者の発表。46センチのコイを釣り上げた方が見事第一位となりました。そして、特別賞として最多数を釣り上げた方にも豪華賞品が手渡されました。この親子は30匹と数釣り部門ではダントツの成績。彼らはひとつのポイントにとどまることなく、足を使って探りあてた結果が好成績に結びついたようです。魚を釣り上げるときのそのすばやい手返しに講師全員も脱帽。もう君には何も教えることはありません。

13組がエントリーした釣り大会の結果発表は全て終了。釣り上げた魚の総数は何と115匹。もちろん、全員ボーズなしです。商品も全員にいきわたったおかげで子供たちも上機嫌。これには講師全員も「よかった、よかった」と大喜びの表情。大成功の釣り大会となりました。

夕食を終えると今度はホタル観賞の時間。僕ら講師も、もちろん参加。虫よけスプレーをふって出かける準備を整えます。途中、バスの中では村会議員さんよりホタルの生態などの説明がありました。これによると、ホタルは10日ほどしか生きられないとのこと。はじめて知るホタルのはかない一生に命の尊さというものを改めて痛感しました。やがて、バスは現場へと到着。いっこうは小川の橋のたもとへと向かいます。「はい、左を見てください」との声に何ともすばらしい光景が目に飛び込んできました。そこには、50匹はあろうかというほどのホタル。まるでクリスマスツリーか夜景を見ているような感覚で、まさに幻想の世界。まるで宇宙旅行にでもきたような気分です。(そう思っているのは僕だけかもしれませんが・・・)あちらこちらでも、「きれい」、「すごい」といった声が。しかし、この画面上でそれをお見せできないのが非常に残念です。

ホタル観賞を終え、ロッジへと戻った僕たちは一目散で温泉へと直行。どっぷり湯船へとつかり、1日の疲れもすっかりとれました。

翌日の午前8時45分。朝食を終えた参加者を連れ本日は渓流釣りへとチャレンジです。ウキ釣りでカワムツやアマゴを狙う予定ですが、ひときわ警戒心が強いとされる川魚。前日のような爆釣はまず考えられません。ましてや大勢の人数が押しかけることにより状況は極めて困難といったところでしょう。この日は川釣りのスペシャリストである講師も合流し、先頭に立って川釣りの指導を行ってもらいました。

今日のエサはイクラ、カワムシ、カゲロウの幼虫など。厳しい状況が予想されましたが、釣りはじめて10分もたたないうちにいきなり1匹目のアマゴをゲット。10センチ程度の小型ですが、これを釣ったお父さんも思わずニンマリ。続いて子供がオイカワを釣り上げるなど予想を反し幸先良好です。また、堰堤の下付近で釣っていたお母さんに声をかけると、アタリの取り方が難しいとのこと。技術的な指導の後、世間話などをしているとこのお母さんは偶然にも以前僕が住んでいた町内におられることが判明。その後は、町内の話題でもちきりとなりました。「それじゃあ、がんばってください」との言葉のもと、僕は他の生徒を見に行くため、きびすを返した瞬間「ツルッ、ドボン」とすごい音。何か嫌な予感が・・・。

たった今しゃべっていたお母さんが川で転倒。ジャンバースカートが水ひだしになっています。恐らく濡れた石の上に足を乗せてしまったのでしょう。僕が声をかけると「大丈夫、大丈夫」と笑っていたお母さん。本当にケガはなかったのでしょうか。子供からは「バッカァー」といわれていました。

川釣りに飽きた数人の子供たちは、裸になって川遊び。黄色い歓声をあげる都会の子供たちには、これがとってもお気に入りだったようです。

雲行きが怪しくなってきた午前11時過ぎ、「撤収」の号令とともに道具を片付けはじめました。生暖かい風はこの後、間違いなく雨を運んでくるに間違いありません。

しばらくすると、案の定大粒の雨が勢いよく降ってきました。何とか全員無事にバスへと乗り込むことができ、一旦ロッジへと戻ることに。

昼食を終えた参加者は宿泊先のロビーで記念撮影。今回は2日連続の釣果と天気にも恵まれ、全員の満足した表情が伺えました。

午後1時30分、参加者一行はたくさんの思い出とともに下北山村を後にしました。帰りのバスの中、僕はある子供に「明日からまた学校やな」と話し掛けると「おっちゃん、嫌なこといいよるな」とばかりに睨まれてしまうはめに。余計なことは言うもんじゃあありません。悪い印象を与えてしまったようです。

午後5時過ぎ、バスは東大阪市民会館へと到着。参加者ひとり、ひとりからは「ありがとうございました」とのうれしい言葉までかけてもらいました。

これをもって東大阪市の前期釣り教室は終了。東大阪市関係者並びにつりnet及び㈱ヤマシタさんからもご尽力をいただいたおかげをもちまして大盛況のもとで幕を閉じることができました。そして、何よりもうれしいのは全員が事故もなく帰阪できたことです。また、体を張ってご協力いただきましたインストラクターの皆さん、本当にお疲れ様。ありがとうございました。

この釣り教室を通じ、日頃子供と接する時間の少なかったご父兄方においてはきっと何事にも換えがたい貴重な時間を過ごせたことだと感じております。

今回はじめて魚を釣ったという子供も、自分の手で釣り上げた魚の感触というものを忘れることなく、一生の思い出として心に残してくれることでしょう。

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