釣り教室もいよいよ3回目へと突入。
ここまでくると、生徒さんの顔もある程度は記憶できるようになってきました。教室でも互いに声をかけあったり、和気あいあいとした雰囲気にもなってきています。
本日のメインとなる科目は「釣りの安全知識について」、東大阪市消防局出動による救急救命時の実演講義。こんな機会はめったにないということで、僕自身も勉強させてもらえるよいチャンスなのです。
当教室の専任講師のうち、1人は東大阪市消防局にお勤めの方。カリキュラム作成の打ち合わせ時においても「釣りは水辺に立つことが前提となるため、是非とも最低限の救急救命は教えておきたい」との熱い言葉のもと、実現することにあいなりました。
午前9時をまわり、救急車が教育センターの正面玄関へ到着。3名の消防隊員は人工呼吸の実習に使用するダミー人形のケースをかかえ、キビキビとした足取りで教室へと突入、いや入ってこられました。教室の中央付近にはゴザが敷かれ、その上には先ほど運ばれたダミー人形が3体セットされました。(うち、1体は乳児の人形)
まずは実習に先立ち、担当講師より大型ゴミ袋(ビニール袋)を使った救命具の作り方が説明。釣行時には必ず大型ゴミ袋数枚を携帯するようにと訴えかけました。ゴミ袋は2枚に重ねて空気を入れ、口をしっかり結ぶと立派な救助用ウキ袋へ早変わりするとのこと。思わず「なるほど、こういう方法もあるのか」と納得。安全知識に関してはビギナーのレベルにある僕も、この役立つ説明にはただ感心するばかりでした。その一方で、父兄方もうなずきながら講師の説明に集中しています。また、ゴミ袋は救助目的で使用しなくとも、釣り場ではゴミ袋としての役割があります。そのため、釣行時には必携である一品。まさに一石二鳥といったところです。
安全知識に関する実習は、親と子がそれぞれ分かれることになりました。父兄方には教室内で人工呼吸法(心肺蘇生法)と止血法を、子供たちには廊下で止血法とロープ結びを説明することになりました。
救急救命では溺水事故などにより呼吸が停止した場合、心肺蘇生を早くすればするほど助かる割合は高くなり、遅いほど死亡する確率は高くなっていきます。具体的には、呼吸停止の2分後に人工呼吸をはじめると90%程度の確率で生命を救えますが、3分後には75%、4分後には50%、5分後には25%となり、10分後にはほとんどゼロに近い状態となるとのこと。すなわち、時間が経てば経つほど生命を救うことができなくなるというわけです。釣りをするにあたって、溺水事故は常に背中合わせ。人工呼吸法の習得は必須と考えてもよいでしょう。
ちなみに、皆さんが119番を通報されてから救急車が到着するまでには何分位かかると思いますか?これについては、全国平均で5~6分というのが現状ということです。とはいえ、脳が酸素なしで生きていられるのは、わずか3~4分。迅速な119番への通報と応急手当が生死を分ける鍵となるのです。
また、救急時には、次のような「救命リレー」と呼ばれる流れがあります。
①その場に居合わせた人(応急手当)→②救急隊員(救急措置)→③医師(専門治療)。このように皆さんの勇気とすばやい救命リレーによって、尊い命が救われることとなるのです。
教室内に話を戻しましょう。まずは消防隊員が準備したダミー人形を使って人工呼吸のお手本を説明。その周りには真剣な眼差しを浮かべた父兄たちが取り囲んでいます。お手本が終わると、講師からは「それでは、順次やってみて下さい」との声がかかりました。しかしながら、恥ずかしいのか全員が尻込み。特にお父さん方にいたっては、お母さんの影に隠れたり、後方待機といった方もみられます。「恥ずかしがってる場合じゃありませんよ、命にかかわることですから!」と講師からは激が飛びます。しかし、依然として動きはなく父兄方は固まった状態。たまりかねた講師は「そしたら、そこのお母さんから、いってみましょか!」と強引に前へ出てきてもらうことにしました。
実技に入ったお母さんからは「もしもし大丈夫ですか、誰か救急車呼んで!」や「異物確認、気道確保、人工呼吸!」と、蘇生法の手順に基づいたかけ声が上がります。これに続いて人形の口に息を吹き込み、その胸のふくらみ具合を確認していきます。
講師からは「そんなに息を入れたら、肺が爆発してしまいますよ!」と厳しい口調が。命にかかわる大切な講義により、指導する側も熱が入ります。「はい、それでは次に後ろのお父さん!」と、この後も次から次へと父兄が交替。人工呼吸の実技は次第に流れにのってきたようです。中には、気道確保がうまくいかず、息を吹き込んでも人形の胸がふくらまないといった光景も見られました。何とか全員を一巡したところで、次に三角巾を使った止血法なども説明されます。
ちなみにケガなどによる出血の際には、体内血液の20%が急速に失われると「出血性ショック」という重い状態となり、30%を失えば生命に危険を及ぼすということ。万一に備え、出血時の応急手当についても習得しておく必要はありますね。
一方、廊下では子供たちが集合。「サビキちゃんバンダナ」などを使っての止血法やロープ結びの実技指導が行われています。
しかし、子供たちはバンダナを振り回したり、ロープで縄跳びをするなど、注意しているにもかかわらずまとまりがつかないといった様子。これには、消防隊員方も手を焼いているといった感じが伺えました。
応急手当の実習に続き、午前11時からは楽しい工作の時間。親子揃って「もんどり」を作ってもらいます。この「もんどり」とは、小魚やエビなどを獲る漁具の一種。最近では見かけなくなりましたが、僕が幼少の頃にはため池などに仕掛けてモロコやタナゴをよく獲ったものです。また、もんどりはエビ撒き釣りのエサとなる「シラサエビ」を捕獲するにはもってこいの一品。エビ撒き釣り師の皆さん方、近くの沼や池で一度お試し下さい。
このもんどりは、1.5~2リットルのペットボトル、カッターナイフ、ハサミ、タコ糸、マジックペンを使って簡単に作ることができます。
工作手順を簡単に説明すると次のとおりです。
- カッターナイフで注ぎ口部分(首根っこの部分)をカットします。
- ①の切り口より、10センチ程度下がったボディ部分をカットします。
- ②でカットした部分を逆さまに向け、ボトルのボディにセットします。(ここが獲物の侵入口となる)この時、内側にくる侵入口部分はボトルの外側より1センチ程度高くなるように成形します。この内、外の高さが逆になると侵入口部分が底へはまってしまうことになるのでご注意を。なお、切り口となる部分は全てペーパーなどでなめらかに仕上げるようにします。
- 切り口から1センチ程度下の部分4箇所にマジックペン(ボトルの内外側の両方)でしるしを付け、カッターナイフの先を使って穴を開けます(ボトルの内外側の両方)。そして、それぞれの穴にタコ糸を通していきます。(穴部分についてもペーパーでなめらかに仕上げること。)
- タコ糸を通した状態で内側の侵入口部分を完全に外し、タコ糸に結び目を作ります。
- 最後にボトルの底付近に8箇所程度穴を開け、水切り穴を作ります。
工作では、担当講師から上記の行程をゆっくりと分かりやすく説明していきます。僕を含めた数名の講師は教室内を巡回し、工作手順やナイフの扱い方などを確認していくことにしました。釣り教室には小学校低学年の子供たちがたくさんいます。父兄がついているとはいえ、ぎこちない手つきにより見ていてヒヤッとする場面もありました。
1時間を経過し、ケガもなくほぼ全員のもんどりが完成しました。これには子供たちも大喜び。担当講師も「やれやれ」といった表情を浮かべていました。
本日をもって、ひととおりの室内講義は終了。初年度の釣り教室はまさに手探りの状態でありましたが、皆さんの協力により何とかここまでやってくることができました。
いよいよ次回は大東市深北緑地での実釣。6月24日、25日には奈良県下北山村の合宿によりこれまた実釣となります。子供たちの笑顔を見るためには、何としてでも晴れることが絶対条件。とはいえ、時節柄そろそろ梅雨入りが心配なんですよね・・・。