今回からの講座では、海釣り全般に関する予備知識を含めたお話をしていきたいと思います。
まずはその第1回目として、海釣りの基本知識ともいえる潮の干満について触れていきましょう。
~潮の干満(潮汐)とは?~
釣りをされない方でもご存じとは思いますが、海には潮の干満というものがあります。
月と地球は互いに引っ張り合いながら動いており、これを「引力」と呼んでいます。引力は、互いの距離が近いほど強くなり、離れるほど弱くなっています。月と地球は万有引力で引き合っていますが、距離が一定に保たれているのは月と地球との相互連動による遠心力が働くためです。この遠心力は地球上のどこでも同じ大きさです。この遠心力と引力の合力が潮の満ち干きを起こす力となっています。地球は1日1回自転していますので、満潮と干潮はそれぞれ2回起こることとなり、また、地球には月と太陽の両方の引力が働いており、双方の力が合わされば潮の干満は大きくなります。具体的には、太陽と地球が一直線上に並ぶ新月(闇夜)の周期前後と満月の周期前後では、引力が重なって大きくなります。すると、海面の上下動が大きくなるので大潮となります。上弦(新月から満月になる間の、月が半円形になった状態のこと。月が沈むとき、弓の弦を上向きにしたような形になる)と下弦(上弦に対して、満月ののち、次の新月までの、月が欠けて弓の弦を下向きにしたような形になった状態のこと)の時は、月と太陽の引力が互いに消し合うので、海面の上下動が小さくなり小潮となります。
このように、潮の種類と月の満ち欠けとは切っても切れない密接な関係があるのです。(小学生あるいは中学生の頃、理科の時間に学習されたことと思います)
~潮の種類と周期について~
潮の種類には次のようなものがあります。
大潮:新月と満月の前後に廻ってくる潮です。最も干満の差が大きよく動ので、一番釣れる可能性の高い潮まわりです。
中潮:大潮に次いで干満の差が大きく、比較的よく動く潮まわりです。
小潮:大潮とは対称的に干満の差が小さく、あまり動きのない潮まわりです。
長潮:干満の差がほとんどなく、全く動かない潮まわりです。
若潮:潮の周期の入れ替わりにあたり、比較的よく動く潮まわりでこれらの潮が月の満ち欠けにより、約15日周期で繰り返されることになります。(潮汐を参照)
~潮の干満(潮汐)と魚の食いについて~
それでは次に、潮の干満(潮汐)と魚の食い(活性)の関係を見ていきましょう。
潮位の差が大きい時(大潮)と小さい時(小潮や長潮)では、一般的に潮位の差が大きい時(大潮)の方が魚はよく釣れるといわれています。
潮位の差が大きい時は、潮の動きも大きくなります。潮の動きが大きいと、潮が速く流れ、湧昇流(潮が下から上へ湧き上る)が起こります。すると、この流れによって下層にあるプランクトンが上層に吸い上げられ、エサ類が海中に散らばった状態になります。
こうなると、魚の活性も高くなり、結果的にはよく釣れるということになります。
また、潮がよく動き、流れのある時は波止にぶつかってできた波の影響で、酸素の量が海中へ多く取り込まれるため、魚の活性が高くなるという見方もあります。
~潮の干満(潮汐)と時合いについて~
次に、魚がエサを追い求める潮時を見ていきましょう。
潮汐と時合いの関係図をご参照下さい。これは満潮と干潮の潮差をそれぞれ10等分したものです。海釣りでは俗に、「上げ七分、下げ三分が狙い目」とよくいわれます。
魚が活発にエサを食べるのは満潮または、干潮時刻から約2時間後といわれます。潮が動き出すと、海水の酸素量が増え、エサが海底から舞い上がったり、海草や岩礁帯からこぼれ落ちたりします。また、潮が満ちてくると魚は波止際や浅場へ寄り、干いてくると沖へ出て行く傾向があります。
ちなみに、満潮と干潮の時刻には潮の流れは止まってしまいます。(潮止まりと言います。)
~潮見表(潮時表)の見方~
潮見表(潮時表)とは、1日毎の潮の種類と満潮及び干潮の時刻が記載されたものをいいます。潮見表(潮時表)は釣り雑誌に掲載されていたり、釣具店などでも配布されています。
それでは、実際に一例をあげて、潮見表の見方を解説していきましょう。
今回は「2015年3月1日(日)に、大阪府の大阪港へ釣りに行く」と仮定します。
当該日の段を見ると潮の種類は、「若潮」と記載されています。お分かりとは思いますが、「大」は大潮、「中」は中潮、「小」は小潮、「長」は長潮、「若」は若潮ということです。潮の種類については、頭文字のみに省略されて掲載されていることも多いようです。
また、潮の種類については、日本全国どの地域も同じです。同じ日に、釣る地域によって潮の種類が異なるといったことはありません。
次に、干満の時刻ですが、これは釣り場によって格差があります。そのため、和歌山港、神戸港など、各地域の標準港ごとに干満時刻が表示されています。今回は、大阪府の大阪港という釣り場なので、3月1日(日)の大阪は、満潮が午前7時25分と午後4時17分、干潮は午後1時45分と午後11時11分となっています。
しかし、この時刻はあくまで大阪の標準港(大阪港)ですので、神戸港という釣り場の場合は、「各地の潮時差」を見るようにします。すると、神戸港では、「+10」という表示になっています。これは、大阪の標準港(大阪港)における干満時刻より、それぞれ10分遅れるという解釈になります。(逆に-10と記載されている場合は、10分早まるという意味です)
これらをまとめると、2015年3月1日(日)の大阪港海域は若潮で満潮が午前7時25分と午後4時17分、干潮は午後1時45分と午後11時11分ということになります。
なお、潮時表に掲載されていない釣り場については、釣行する釣り場に一番近い地域の潮時を参考にするとよいでしょう。
次に、釣れる可能性の高い日(潮まわり)を見ていくことにしまし先ほどもお話いたしましたとおり、海釣りでは潮のよく動く「大潮」または「中潮」の日に釣行することがベストといえます。そして、その潮まわりに加え、朝夕のまずめ時(日の出や日没前後の、食いがよくなる時間帯)に満潮時刻が重なっていると、最も釣れる可能性の高い日となるのです。
このように潮見表を活用すれば、効率よく釣れる可能性の高い釣行日を選択することができます。
ただし、これも判断基準のひとつのということで必ずしも「絶対釣れる」というわけではありません。
釣り場では、潮まわり以外にも、天候・水温・風向、その他いろんな条件が重なった結果として、釣果が大きく左右されるということになりそのため、より確実な釣果を望む方には、釣り場・日の出や日没時刻・天候・潮の種類・水温・風向・釣れた時刻等、各種データを残していくことが重要となってくるでしょう。(僕はのんびりと釣りを楽しむタイプなので、あまり釣果にはこだわりませんが…)
海の自然現象である「潮汐」をよく理解し、うまく利用することが釣果アップの秘訣となります。