第18回 波止釣りの安全知識 1 (事故の未然防止について)

波止釣り 講座

第18回目からの波止釣り講座は、安全面についてのたいへん重要なお話をさせていただきます。

安全面については、第2回目の講座において簡単に触れましたが、釣りは気象やルール・マナーなどを無視すると、たちまち危険な目にさらされ、せっかくの楽しいひとときが悲惨な結果を呼び起こすこととなってしまいます。

特に磯釣り・防波堤釣りにおいては、目立って「海中転落事故」の件数が多く、死亡・行方不明へとつながる確率が高ことも特徴といえます。平成24年度海難事故発生状況について(別表P.27-28 参照 )

釣りに関する事故の原因となるものは、主に
・実施中の活動に対する不注意
・気象・海象不注意
・周辺環境に対する不注意等
自己の過失によるものが多くを占めています。
和田防4

沖一文字北端赤灯

事故を未然に防止するためには、日頃から参考となる資料(釣りの教則本や釣り雑誌に掲載されている安全対策)などによく目を通しておき、自然に対する知識を充分持つようにしておいて下さい。
そして、最悪にも事故が起きてしまった場合は、冷静な判断で対処できるように心がけておきたいものです。

・転落した人を見たが救出困難
・転落した本人が防水携帯で通話可能状態など

緊急時は
118番へ連絡して下さい

最近では、携帯電話の普及によって瞬時に緊急連絡が可能となり、事故に対しても迅速に対応できるようになりましたが、
発生件数は依然として減少傾向にはありません。

今回からの講座は、これから釣りを楽しむ上において、皆さんの命にかかわる大変重要な話となりますので
じっくりとご拝読下さい。

~事故を未然に防止するには~

1.釣り場気象の事前確認
釣行前は、充分すぎるほどの天候確認をお願いいたします。天候確認とは、釣行する前日だけでなく、2~3日前からの経過(天気の移り変わり)が重要です。あたり前のことですが、釣行する地域の気象を確認することです。
なお、釣行時の天気が良い場合でも、海辺の天気は陸地と違い急変します。このことだけは、肝に銘じておいて下さい。
また、台風の接近時については、たとえ台風が離れていたとしても、天気図によりその存在が確認できる場合は絶対に釣行を中止することです。特に、沖の一文字波止や潮通しのよい波止は、突発的な大波により波をかぶる危険性があります。毎年起こる人命事故の大半がこのケースです。無理な釣行は絶対になさらないで下さい。
台風ではなく、ただ単なる低気圧が通過する際(前線の通過時)も、突風が吹く場合がありますのでご注意下さい。
また、12月~年明け2月頃にかけては、北寄りの強い季節風が吹く日が多く、波も高くなるため、慎重な判断でもって釣行するようにして下さい。初心者の方は、この期間だけはできれば釣行を辛抱していただきたいものです。
土生港白灯

2.安全な釣り場の選択
釣りを楽しむ際には、足場の安全確認をお願いいたします。
足場の狭い場所、滑りやすい場所、波をかぶりやすい場所などは避けて下さい。
波止では、テトラポットからの転落事故が頻繁に発生しています。テトラポットの周辺は絶好のポイント(穴釣りなど)となっていますが、足元には充分注意した上で釣るようにして下さい。なお、テトラポットでの夜釣りは足元が見えにくいため、大変危険でまた、足場のよい岸壁でも不注意により転落する場合があります。飲酒による泥酔がその代表的な例ではないでしょうか。泥酔状態になれば、当然足元がフラつき、転落する危険性が高くなります。最悪、救命胴衣を身に着けずして転落してしまった時には、いくら泳力がある方でもおぼれる結果となってしまいます。そのため、堤防での深酒は厳禁です。
また、子供連れのお父さんは、絶対にお子さんから目を離さないようにして下さい。
釣りに夢中になっていると、その間に子供はウロウロと歩きまわることがよくあり、気がついた時には、「ドボン」といった事故もよく耳にします。視界から外れることのないよう、充分に気をつけて下さい。
第2釣り台西3

3.安全装備の充実(救命胴衣の着用等)
万が一の転落事故に備え、救命胴衣(ライフジャケット)は必ず着用して下さい。
「波止でおおげさにライフジャケットを着用するのは、ちょっと恥ずかしいなぁ」とか「私は泳げるから大丈夫」、と言われる方もおられるでしょう。しかし、転落とは、「突然、服を着たまま海中へ落ちる」ということを言いますので、そのような場合、人間はパニック状態に陥ります。泳ぎの達者な人でも、海水を多量に吸い込んだ服が障害となって、思ったように体が動きません。また、落ちる時に頭を打ってしまったら脳しんとうを起こし、浮いていることすら困難になる場合もあります。

「自信過剰は事故のもと」です。泳げることと、転落してとっさに泳げることとは、まったく別であるということです。そのため、必ず救命胴衣は着用するようにして下さい。(特に海面までの高さがある堤防では、救助するのに時間がかかるため絶対着用でなお、救命胴衣を着用する場合、「又ヒモ」は必ず股間をくぐらせ、(写真・装着法2)しっかりと結んでおいて下さい。又ヒモが股間を通っていないと、救命胴衣がすっぽ抜けることがあります。(写真・装着法3)

装着法2

装着法3

また、釣行時の足まわりについては、登山靴やスパイクシューズなど、第2回目講座に掲載した底に凹凸のあるものが好ましいでしょう。夏場のビーチサンダルは滑りやすく危険です。
靴4

安全装備面では、その他、雨カッパ・ロープ・救急箱(最近では、ファーストエイドキットという携帯用ボックスも販売されています)・携帯電話(事故発生時の緊急連絡)なども忘れず持参するようにして下さい。
救急箱1

4.単独釣行は避ける
穴場(良いポイント)を知られたくない等の理由から、ひとりで釣行する方もおられます。確かに、ひとりでの釣行は、仲間に気をつかうこともなく、思い立った時にすぐ出発でき、また、帰りたい時間にもすぐ帰ることができるので、気は楽です。しかし、一旦事故(転落等)が発生した場合は、仲間どおしでの迅速な救助活動といったことを行うことができなくなります。(周囲の釣り人が迅速に対応してくれれば話は別ですが…。)
特に、冬場の海は海水温が低いため、転落すれば迅速に救助しないと、心臓麻痺を起こすといった危険性もあります。
家族に「ちょっと、釣りに行ってくる」と言って、出かけたまま帰ってこないといった事例もありますので、行き先と帰宅時間、渡船を利用する場合はその連絡先も必ず伝えておくようにして下さい。

5.体調を整え、余裕のある計画を立てる釣り場で気分が悪くならないよう、事前に体調を調えておくことが大切です。また、車で釣行される方が多いと思いますので、前日の睡眠は充分とるようにして下さい。また、冬の海は想像以上に寒いため、風邪気味であれば、やめておいた方がいいでしょう。
そして、思いつき、時間的に余裕のない行動は釣れないばかりか事故につながりやすいので、気象状況にあわせ、余裕を持った釣行計画を立てるようにして下さい。

新島

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